初孫の【急逝】を知らない母

我が長男が、就寝中に突然死してから、4ヶ月。

我が母は、前頭葉側頭葉型認知症(ピック病)が解ってから、はや4年。病院・周囲の方々のお陰で、老健(老人保健施設)に、『元気過ぎた母親』が、大人しく過ごしています。

長男の死を、告げるべきか、病院・施設に聞きましたが、両者とも、【やめて下さい】と。

本日、4ヶ月目に、ようやく母に会えた。

久しぶりで、とても喜んで出迎えてくれた。

『おふくろ、ごめんな。仕事が忙しくって』

我が最愛の母は、【少し寂しかったけど、その分、皆が忙しく元気なんだと思って、安心するようにしていた】と。

矢継ぎ早に、たくさん聞かれた。特に初孫の長男のことばかり。

『おふくろさ~、長男の輝竜は、私がかつては貧乏農家だった、両親から受けた厳しい教えのもと育ったから、必死に働いているよ。その会社の方々からも良く言ってもらって、嬉しいよ。おふくろと、亡き父の教えは間違っていなかったんだね』

【それは本当に良かった。あなた達の心配以上に、孫達の将来の心配をいつもしているのよ】

『おふくろは、優しいね。私を生んで、育ててくれて、本当にありがとね!』

『何を、言ってるのよ』

幼い頃に、母が病死し、最愛の妹が輸血が原因のC型肝炎で、突如亡くなり(1年半ほどノイローゼのようになっていたことを、子供心に思い出す)、そして、何度も死に掛けながらも不死身だった夫の死に、放心状態だった繊細な母。《その時には、既に母が現在の病に侵されていた》

【稲妻】というタイトルで、自分の俳句を自費出版するほど、俳句にのめり込んでいた梅乃さん。
『輝明!その窓を開けてみて!』

『そうなの。蝉の声や鳥のさえずりが美しいのよ。近頃はヒグラシに変わって、秋の気配を感じられるのよ』

【本当だ。お盆後の儚げさだ。ここは四季折々ならず、二十四節気を愛でることができるね】

【嘘】が嫌いな私ですが、愛すべく母の想いを鑑みて、必死に長男の死のことを隠し通した。外を見ながら、涙をぬぐい。

神様、仏様、母のために、ご考慮のほど、宜しくお願い致します。