米松製材品価格下落。【国産材】で日本の森林を守るキッカケになれば

昨日(2020年6月6日)の日経に小さく記されていました。

『米松(ベイマツ)製材品5.5%下落』

東京地区 2013年4月以来の安値の見出しで。

米松(ベイ松)は、ウルグアイラウンド協定の頃から、木造住宅の梁として多く使われ出し、最近では柱にも利用されている。

40、50年位前の住宅の小屋裏を点検すると、松丸太(まつまるた)と呼ばれる、湾曲しながらも立派な梁を当たり前に見かける。

まだ、インターネットが盛んでない時期に、【ベイマツ】に関して調べていたところ、図書館の書籍のなかで、驚く事実を見てしまいました。

ベイ松という名称故に、アメリカ産の松だと信じていましたが、その大学教授の本では、名前は松でも、松とは別物で、もみの木系のものが多いと。そして、彼の強度実験によれば、モミの木は、国産の松と比較して、応荷重に弱いという事実。つまり、梁部に使うには、それなりの背(高さ)が必要と。

ウィキペディアで調べると、ベイマツは松属の仲間ではなく、トガサワラの近縁と。

ベイマツは、アメリカトガサワラ、ダグラスファー(ダグラスモミ)、オレゴンパイン等の総称らしい。(よって、すべてモミの木系ではないらしい)

さらに、アメリカトガサワラを調べてみると、松科トガサワラ属。カナダから、アメリカ西部、メキシコ西部に生息。
トガサワラ属で調べてみると、マツ科の針葉樹の分類群の一つと書いてある一方で、いくつかの説があるなかで、モミ亜科とするのが普通らしい。

私がここで書きたいのは、アメリカ太平洋岸における山火事で、近年多くの山林が消失しているなかで、伐採をし続けて一番の同盟国であり友である、アメリカの自然は守られるのか?
トガサワラは経度懸念(絶滅危惧種の考えとしては経度)とされているが、更新が必要と。

かつて、日本(九州地区周辺)にも多く生息したトガサワラですが、明治時代に発見されて以来、乱獲により、今はかなり個体数を減らしてしまったらしい。

また、ツガに近い樹木性質らしいが、松のように、曲げた際の粘りがどこまであるのか?
ある程度の堅さはありながら、加工がしやすい(実際に爪を立てると、痕が残る)という特徴から、硬い松に比べて、地震大国日本における強度は、本当に大丈夫なのだろうか?という素朴な疑問。

また、建築する材料の選定時に、出来ることならば、そこの周囲に生息している樹木を使うのが良いと言われてきた事実。
実際に、この旭区周辺に、まだ残る農家の古い住宅は、地木(じぼく)を山から牛で引っ張ってきて、材木屋さんで製材したというの言い伝えの残る建物が多く、実際に100年前後の年月を経て、より味わいを増しているし、関東大震災をくぐり抜けてきたものも多い。

かつて【天領・江戸幕府の直轄地】・(江戸の町の火災時に伐り出す用だったのか)だったためか、山々は杉の人工林で、昼なお暗き状態でしたが、世界の珍獣(絶滅危惧種)の保全の意味でつくられた、ズーラシア(横浜動物園)開園により、かなりの杉山が消えました(その頃は、手入れも行き届いていない状態でしたが)。

現在、地方の森林も危機に瀕しています。
手入れを怠ると、木々が密集したままで、丈夫な大木に育たない。
枝打ちをしないと、【節】が多くなり、商品価値が落ちる。
根が上手く張らず、豪雨時に土砂災害を引き起こしやすい。
一定の樹齢が過ぎると(伐り時を逃すと)、CO2吸収量が減っていく。
代々の『継続』により、次世代・次々世代のための樹木を育成しているが、ここ数十年、国産材の使用率が激減したため、名産地のごく一部以外の樹林は、もう手遅れの時期に入り始めている。
当然、ただでさえ危険を伴う林業の跡継ぎ(若者が)、劇的に減っている。
さらに、山林にも税金が課されるという法律が最近でき、日本の危機でもあると考えます。

地方の話では、当たり前らしいが、山を大量に所有していると、廻りの方々から、『それはそれは、大変ですね』と、同情されるらしい。
森林を多く所有するということは、米の取れ高を表す『石高』同様に、ステイタスの高いものだと思っていましたが。

アメリカ(樹種によってはアマゾン・北欧)の自然を残すため、日本の森林を次世代へ繋いでいく・国産木造建築を残していく意味からも、輸入材から、国産材へのシフトを進め、国土の67%(林野庁による)をも占める森林を、様々な角度から活かしきらなければ、多くのご先祖様方に申し訳ない。当然、子孫達の財産を壊さないで欲しい。

国際連合食糧農業機関(FAO)の報告によれば、樹木が育っていない草原も含めて、世界の陸地に占める森林率は、30.3%。
元々、『自然に打ち勝つ』という状況下に置かれていた民族、産業革命以降、多くの樹林を伐採し、活用したけれど、日本という火山列島国(成り立ちが新しいため、土自体にも緑の再生能力が著しく高い)と違い、大陸では、緑の自然治癒的な再生能力が低いため、早くからの文明国には、森林が非常に少ない。

北欧を除くヨーロッパ諸国は、石の文化で、建物も日本と違い、長く持つ石造りのものが多いが、森林が多かった時代には、木材を多く使った建築が多かったらしい。
中国においては、21.2%。インドでは、22.8%。人口が日本の比較にならないほど多い国だけに、心配でならない。タクラマカン砂漠の拡大、黄河流域の砂漠化も怖い。日本へは、直接的には、黄砂の移動、東シナ海での漁業への影響もあると考えます。

日本は、長年掛けて育成してきた和牛、お米を始めとした農産物のブランド力が高いものを、プレミアムの高い商品として、他国へ輸出している昨今ですが、秋田杉、尾鷲檜、木曽檜、近頃では東濃檜はもちろん、その他の地域でも丹精込めて育てた木材・それを巧みに加工した木製製品の輸出国になる日も、近いと私は思っています。(そうした中では、広葉樹林・混交林も日本本来の姿であり、それらを活用していく手法・守っていくことによる、土砂災害等自然災害の減少・自然生態系の復活・養分をたくさん含んだ水による河川、海の魚介類の復活には重要)

お客様・建築に係わる者の樹種の選定、木造建築物の長寿命化、AIも含めた林業改革の連携により、木材輸入国から、木材輸出国に変革することを心から願います。