古くて味のある荷物運搬車(サニトラ)

経営者でもある友達が、荷物運搬専用車両として、30年以上前の日産サニートラック(B120)を、案外とお手頃価格で購入しました。

マイナーチェンジ前から数えると、50年以上、ほとんどボディーラインは変わっていません。つい最近まで南アフリカで生産販売されていた実績のあるクルマです。

彼は、荷台の短いショートボディーを購入しましたが、長物を積めて500㎏までOK   のロングボディーも捨てきれない。

このサニー(1200cc)は、ほぼノーマルの為、スピードは、私の軽トラよりも遅いです。高速でも80㎏/h程度での運転が疲れないため、安全運転にはもってこいです。
また現在ではあまり聞けない、キャブレター方式の吸気サウンドも生き物のようで心を揺さぶります。

私が小さい頃には、酒屋さん、お米屋さん、魚屋さん、農家のトラックとして、見ない日は無いほど、安くて丈夫なトラックとして頑張っていました。

荷台よりも前だけ見ると、当時我が家が乗っていた4枚ドアセダンの、サニー(B110)とほぼ同じプレスラインのため、懐かしく、愛おしい存在です。当然、今時のクルマもいいですが、機械仕掛けで、コンピューターとは無縁の自動車のため、今はやりのSDG’Sにも多くの点で合致した壊れにくく長持ちしやすい機構です。

左側が、トヨタセリカや、マークⅡ、コロナ、カリーナなど2000㏄の8バルブDOHC   4気筒豪華エンジンだった18R-G(名機2T‐Gの大排気量版)のヘッド。YAMAHAによるもので素晴らしいメカですが、重いのが難点。

一方右側が、TSレースで主流だったA型エンジンA15(PB310サニー)のヘッド。この上部に被さるカバーは、カムカバーではなく、タペットカバー。外見は格好よくありませんが、内部の潜在能力は高いです。

小排気量というだけでなく、OHVというシンプルなつくりの為、物凄くコンパクトに仕上がっています。

エンジン腰下のシリンダーに、カムシャフトは、クランクシャフトから直接、動力を取り込む形状で、このタペットをプッシュロッドという金属の棒で押し上げて、バルブを開くシステムで、とてもシンプルな構造な為、頑丈で、レース車などでガッツリといじったエンジンでは、10,000回転以上回ります。

メーカー純正のままの燃焼室と、吸排気バルブ。

日産の名機A型エンジンは、ターンフローという吸気側と、排気側が同一方向のエンジン形状。

極限まで加工したヘッドと違い、純正のA型は、ハート型の可愛らしい燃焼室です。もともとは、愛知機械工業のコニーから始まり、日産自動車に吸収合併されて進化しましたが、NISSANは、プリンス自動車の吸収合併により得た、S20型という24バルブDOHC6気筒、かつてのスカイラインGT₋R(KPGC10型・フェアレディーZ432搭載の名機を受け継ぎ、進化してきた過程があります。さらには壊れにくい6気筒OHCのL型(名車510ブルーバードは4気筒)も開発し、R32スカイラインからのRB26型も名機だと思います。4気筒で異端児と言われたスカイライン・シルビアのFJ20型エンジンも中空ナトリウムバルブの採用で気持ちよく回った隠れた名機。プリメーラに代表される4気筒SR20型も気持ちの良いエンジンでした。日産の吸収してきた技術、株主だったスバルとのコラボレーションの下手さ加減は残念でならない。(86とBRZで、水平対向をさらに開花させたトヨタの上手さと比較して勿体なすぎる。中島飛行機から続く技術力ですよ)


違った方向で、マツダのロータリー、スバルの水平対向ボクサーエンジン、ホンダのV‐TECはコンセプト的に最高だし、、トヨタの6気筒1G-G型も速かった。切磋琢磨した時代の彼等は、今でも我々のヒーローです。


グローバル化、技術の進歩により、電気自動車が今後の主流になると言われていましたが、
ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、ハイブリッド、水素エンジン、e-Power も見直されてきています。そして内燃機関技術も。

1本足打法に、とかく偏りがちですが、歴史を見返しても分かりますが、極端な変化は、大抵、反動を伴います。フランス革命のテルミドール反動が良い例です。
世界の自動車業界を強力に牽引してきた豊田章男元社長は、いくつもの選択肢を未来に残そうとしてくれました。

便利なだけでなく、人間の本能として、ワクワクする手法も残しておく必要があると思います。
そうした意味でも、古いクルマ=ボロいではなく、それまでの先人たちの努力の結晶も大切にしていかなければ、つまらない未来になるでしょうし、そこで培ってきた技術力が途切れてしまう怖さを感じます。大変ですが、同時に新しいことへの挑戦も。

当然、建物も同様に。