8バルブDOHCセリカ(18R-G)【小川名建設(株)】

30年以上前の3代目セリカと一緒に、嬉しそうに写っている写真。

たまたま、実家の棚の上に眠っていたアルバムに、数少ない昔の写真がありました。

RA63セリカの前期型で、不人気だったライズアップ式ライトで、これに6気筒24バルブを載せて、ドレスアップされたセリカXXの陰に隠れていた車。(峠では直列6気筒はフロントが長すぎ)

初代セリカLBを、パッキンパッキンに角ばらせた感のアメリカ人好みのデザイン。私的にはイタリアのスーパーカー的デザイン。

見た目は、ワタナベを履いているくらいで、一見ノーマルを目指して。
(フロントに205/50 リアに215/55)
足回りを固めて、少しフロントを下げて適度なローダウン。

これが、スカスカのエンジンルーム。
1600㏄のメジャーな2T-Gではなく、2000ccの18R-G(トヨタの最後の良心と言われた隠れた名機です。少々重いけど)。
ミッションもシフト間違えしないズボラながら、ガッチリとしたもの。相性は抜群。

排ガス規制前のエンジンを、トモエのピストンに変えて、2200㏄に。
SOLEXに、タコ足。マフラーは外側は外形があるが、ノンストレスのストレート60Φ。

流石に、フェアレディーZの定番、L2.8改3.1の勢いには負けますが、ハイカムがオーバーラップした時の吸排気音は、最高にシビれました。アイドリング時でも排圧が髙くて、家のガラスが振動してしまう。
今、こんなのに乗っていたら、すぐに没収されてしまいますが、当時はすれすれで走れていました。(私にとっては良い時代)

当時はターボ車全盛期で、ロータリーのFC3S、R32、ノンターボでは、4A-Gのハチロクが、峠では目立っていた頃。(4A-G、A型、FJも乗ってました。ダウンドラフトのロータリーも乗るべきでした)

でも、この子で箱根へ行くと、当時数少ないキャブ車だったので、すぐに皆が追っかけてきました。でも、この8バルブDOHC(1気筒あたり2バルブのツインカム・ただし吸排気が左右に分かれたクロスフロー)、アンダーは強いながらトルクフルで、4連スロットルゆえの瞬発力(キャブ車の真骨頂)もあるので、速いんです。追いつかれたことは無かった。(私には速すぎたので、このあと、10万円で譲ってもらった、4A-GのAA63ブラックマスクに乗り換え、エンジンはメタルガスケットのみで、下りで86を撃墜して楽しんでいました。でも力不足。86は楽しい名車には間違いない)
カリーナやコロナクーペと兄弟車ながら、トレッドが広いため、地べたを這うように、走ってくれる。これを素材に4T-GEUのTA64セリカで、WRC・グループBのサファリを3連覇したのは分かる気がします。何せボディーが強靭。日産が240RSシルビアで走っていた頃。

この子で、第三京浜を全開で、世田谷区の大学まで通っていたのだから、おかしな人間でした。
(警察さんに、よく暴走族と間違われて困っていましたが、それは上手いことやって捕まらなかった。交番前は、音を極力出さないように頑張っていた)

電気自動車、e-POWERは優れているけれど、【暴れ馬のような生き物】が、消えていってしまうのは時代の流れですが、非常に悲しい。若者のクルマ離れが進むのも分かる気がします。
(GRヤリスには希望を寄せますが、日本人が本来持っている猛々しさ・荒くれ者感が、心身ともに薄れていく気がします)


そういえば・・・。
車庫・押し入れにしまっておいたエンジン類は、私の大好きな母(😢)に、いつの間に粗大ごみ行きに。

ただ、天袋に入れておいたヘッドの一部が残っていました。(部品類は、行方不明)

※私は日産ファンながら、トヨタの営業(実際のお客様の声の代弁者)と技術者のコラボレーションの素晴らしさ・その後の整備性を考えた車作り(六角ボルトでいうと、10㎜、12㎜、14㎜、17㎜のソケット、スパナがあれば大抵はメンテでき、新車完成時に、すべて解体し、元に戻せるかのタイムを計っている点等、ニクい演出のトヨタ自動車の素晴らしさを痛感し、先進のAWDと気持ちよく曲がる水平対向エンジンのスバル自動車、他では出せないロータリーサウンドのMAZDAも、軽自動と真剣に対峙するスズキ自動車、乗りやすく丈夫なトラックを作り、かつてはベレットGTや流麗な117クーペを出したISUZU、旧車があまり残りにくいけれど、愛するアイルトン・セナの走りを支えたエンジンを作り出した本田技研工業も陰ながら好きだし、日本の乗用車に大きな影響を与えた技術力と、美しさを兼ね備えるアルファロメオ、WRCを席巻したランチア、反則的なデザインを繰り出し、暴力的なサウンドのランボルギーニ、現在の規制を通す力を持つ(美しく綺麗なサウンド)マセラッティ、名車205を出したプジョー、美しすぎる旧アルピーヌ・ルノーを作ったルノー、ミジェットを輩出したMG、腐っても価値あるポルシェ、迫力あるピックアップ・高級車を作るGM、ロシアの荒野を走るお茶目なラーダ、結果はトヨタに負けてはいるもののこれぞラリーの醍醐味とも言える走りっぷりのsi20要するヒュンダイ、ヨーロッパ・フォード等が大好きですが・・・。

18R-Gのヘッド。
燃焼室側。
カーボンが凄い。

EFI仕様の18R-Gヘッドの燃焼室。
少し、綺麗です。
記憶がいい加減ですが、
空気が薄い状態で、飛ばしていたら、ブローして、エンジンを下ろして、オーバーホールがてら組み直した際に、予備に取っておいて、一度組付けたけど、やはりキャブ車とは相性が悪いようで、まるで回らなかったので、上述のヘッドに組み直したような?

カムを当ててみました。

デカい。
2T-Gをそのまま太らした感じですが、細部が18R-Gの方が、贅沢に作っているように感じます。

一方で、ホンダのV-TECHが発売された当時、とても羨ましかったのを覚えています。

昔の18R-Gのヘッド。

18R-GEUの安っぽいシールの貼られたEFI仕様のヘッド。でも、リブが付いていて、補強されています。

こっちには、愛すべくYAMAHAの浮き文字。

これが8バルブDOHCの所以。
1気筒あたりに、バルブが2本。

吸気時に混合気を引っ張りにくいので、バルブが大きい。(下側)
排気が上側ですが、トヨタの文字とヤマハの音叉マークのコラボレーション。エンジンの内部までいじっている人は、これを見れます。確か、4A-Gは外部には、YAMAHA マークがあったけれど、バルブには無かったはず。バルブが多く小さい分、刻印出来ないでしょうが。

たしか、ウォーターポンプ取付け部。

同じく、18R-GEU仕様。ここに、コネクターがある時点で、電子制御であることが分かります。

ちなみに、左が18-Gキャブレター仕様。
右が、日産(愛知機械工業)の名機、A型エンジンのOHVヘッド。

大きさ・重さが違います。
2T-G、18R-Gが、日産のL型(SOHC)に対して、カムが1本余計に付いているだけと揶揄されていたのは、分かる気がします。でも、レスポンスはいいです。

A12型に比べて、まるで回らなかったA15型エンジンのタペットカバー内部。
写真上側のエンジンヘッド穴から、腰下(ブロック)のカムから押されて、プッシュロッドが上下し、ロッカーアームを伝達して、バルブを開閉。

OHVを馬鹿にしてはいけないのは、バルブ配置から、燃焼室を小さくしやすく、圧縮比を容易に上げることが可能。そして、軽量。1970年代に人気だったTSレースのサニーは、バルブスプリング等を強化させて、10,000回転を上回っていたらしい。当時としては凄い事です。

ハート型というか、フクロウの顔のようなA型エンジンヘッド。

上が18R-G。
下が15A。
500㏄の差はあれど、OHVのA型は燃焼室が小さい。
よって、18R-Gの圧縮を上げるためには、ピストン本体を山型で、さらにバルブが当たらない形状のものに変えなければならなかった。

上が18R-Gの排気側。
下のA型は、吸排気が同じ方向に付いているカウンターフロー型。
(排気熱で、吸気側の混合気が温まり過ぎやすいので、熱対策が必要)

18R-Gの吸気側。
インテークマニホールドと、エキゾーストマニホールドの取り回しが単純で整備性も高い。
そして、エンジンを左手前から見て、左から右にスムースに流れやすいクロスフロー形式を取れる。

バルブスプリングが外れていたので、大袈裟にバルブを同時に開いてみました。(A型)

18R-Gの燃焼室に、A型のバルブを置いてみたら、バルブの大きさの差が歴然。

ただし、高回転まで回せるエンジンなら、これを克服できる。

また、エンジン、駆動系、ボディー、足回り、ブレーキ、重量と、結局は【トータルバランス】で走りが決まるので、何がベストとは言えない点が深くて面白い。

後日、天袋の奥から、トヨタ18R‐Gのヘッドカバー(カムカバー)発見。
トヨタご自慢の結晶塗料が剥離しかけています。オイルキャップは、今時の樹脂製ではなく、金属製で重みを感じます。

ツインスパーク時代のアルファロメオに憧れて、塗料を剥がし、アルミ素地のリブを途中まで削っていたカムカバーはやはり捨てられちゃったかな。


裏側(ヘッド内部側)

この刻印、いつの時代の18R‐Gなのだろう。

純正の点火プラグコード。でもCDIは組み込んであった。
(お金が無くて、シリコンコードを変えなかったか、社外商品が無かったかのどちらか)

カムシャフトが2本見つかり、吸排気×2基分で、4本。

どれも、1351-88270の刻印。

シャフト側面には、トヨタの刻印。

さらにNPRの刻印も。調べてみると、大正元年に船舶エンジン、精米機を設計・作成し、のちにピストンリングを開発し、日本ピストンリング製作所に改称し、自動車・航空機・戦車の部品まで作成していたようです。
現在は、(株)リケン(旧 理研ピストンリング工業)と合併し、2023年10月から、リケンNPR(株)となったらしい。

カムの高さをシッカリ確認しませんでしたが、右側のカムの方が、太っていて『作用角』が大きいようです。

こうしてみると、エンジン特性に差が生じていることは理解できる。
右側の方がバルブが開いている時間が長い。

譲っていただいた方曰く、ハイカムで素材カム(純正を削ったものではない)と聞いていましたが、今となってはよく解りません。
304度と、288度と聞いてはいましたが・・・。真相知らない方がお互いの為かも。

4気筒DOHCながら、1気筒あたり吸排気含めて2バルブなので、カム1本も極めてシンプルです。Ⅼ型4気筒OHCならカムは8つですが、18R-Gエンジンでは、バルブを押すカムは4つしかありません。

カムスプロケットは、1組だけ残っていました。

カムキャップは、いい加減な私でも間違わないように、矢印と、1番から5番まで刻印されています。

ヘッドボルトも発見されました。でも、何か数が合わないな。

これは、確かクランクシャフトのメタル。消耗部品です。

様々な部品で、狩場のトヨタ部品共販には、よくお世話になりましたが、このメタルは、相当傷んでいる状態。当時は学生でお金が無く、メタルをピカールで磨こうとして、先輩に叱られました。今でこそ、ネットですぐに調べられますが、すべてが見聞きしたこと、雑誌、整備マニュアルに頼るしかなかった時代なので、許してやってください。

ヘッドガスケット、どうして残していたのだろう。一度組み上げたら、再使用不能です。

上が純正品。かなり肉厚です。

下がメタルガスケット、ガスケットが抜けにくく、薄くすればするほど、僅かながら圧縮比が上がります。その分、エンジンに負荷は掛かりますが。

純正品の内径。

メタルガスケットの内径は、92Φ。

トモエ商会の鍛造ではない、ハイコンプピストン(壊れやすいらしい)を組み込んでいましたが、燃料が薄かったせいか、エンジンブローした後に、ヘッドを開けて、ビックリしました。2つが明らかに割れていて、
さらにピストンを引き抜き、ピストンリングを外したところ、2つは、ほぼ真っ二つに。もう2つも、クラックが入っていました。

エキマニのガスケットまでありました。

エンジン2基分。裏表が今となっては分かりませんが、1番気筒・2番気筒か、3番・4番かの何れかが、カーボンだらけ。不完全燃焼気味だったみたいですね。

クルマにしても、建物にしても、結局は、時代・用途によって求められる性能が変わる。

ダーウィンは、進化論の中で、言っている。
強いものが生き残るのではない。
賢いものが生き残るのではない。
【変化】に対応できるものだけが、生き残る。
と。

一方で、日本で古くから伝えられる【温故知新】。
故きを温ねて新しきを知るという考え方も大好きです。

また、何かを改造する際、それによって、バランスがっ崩れる。
だから、改造するならシッカリと改造し、トータルでのバランスが大事と。
クルマを通じて改造しまくった挙句、逆に他に大きな綻びを来し、結果、長く付き合えないという寂しさがある。
だから、下手な改造(場当たり的な)をするくらいなら、設計者が必死に考えて造ったノーマルのまま乗るのも選択肢として重要と考えます。(元の設計がダメなら、仕方ないが)

建築においても、壊れたものは直しながら、長く付き合っていける建物であるべきであると考え、絶対的な真理は外さないようにしつつ、柔軟な変化を積極的に受け入れながら、
先人達が、当時の最高と思われた技術力で成し遂げたものを、大切に、見直し、再検証し、新たな道を模索すべきだと考えております。