手摺り工事こそ、手が抜けません

何気ない階段手摺り。

西暦2000年の建築基準法の法改正により、住宅においても階段手摺りの設置が義務付けられましたが、それ以前の建物では、取り付けなくても法律違反ではなかったので、建築側はコスト面、消費者側は『まだまだ若いから、手摺りなんて要らない』という瘦せ我慢面の意識が一致して、以前は『手摺り』が甘く見られている一面がありました。

私はたまたま入社時から、横浜市リハビリテーションセンターの方々にご教授いただく機会を得ていたので、介護保険法の新設、建築う基準法の改正以前から、その重要性をお客様に話して設置してもらっていました。

新築時に手すりを計画しておかないと、手摺りを頑強に支えるブラケット金物が、外れてしまう可能性があります。
『手摺りは、万が一にはその方の体重以上の力が加わる』と教えてもらっていたので、後から手摺りを取り付けるお宅では、下地のやり直しか、下地ベースを既存壁の上から、柱・間柱を狙って、ビス打ちをしないといけない。

さらには、お年を召してくると、色弱の方も増えてくるので、掴まる手摺り本体は、周囲の色に対して目立つ色が好ましい。
また、その方の手の大きさ、握力の低下時を考えると、手摺り本体の直径は32Φ前後が、現在の日本人の平均値としては掴み損ねが少ない。

築60年近い実家(都岡店・倉庫)は、ステンレス製の太い手摺り。しかも、くるくる回ってしまう。時代の産物なので仕方ないけれど、姉は、ここから3回ほど落下している。幸いにも幼少時で、運動神経の良い彼女は大きな怪我に至らなかったが。私は臆病者なので、落ちたことは無い。
年齢を重ねた方だと、大腿骨骨折などで、そのまま寝たきりで歩けなくなって・・・という現実もたくさん見てきたので、手摺りにはうるさい。
横浜は傾斜地が多いので、屋外と屋内との間に、段差解消機(要は車いすごと上下できる簡易EV)、室内各所へ天井吊りで移動できるリフター、その方の介護レベルにより差の生じる浴室内の動き、浴槽への出入り、溺れないような設計等、体力が落ちる可能性も考えて、こちら側が気を使い過ぎる方が住宅での事故を減らすことができます。

住宅内での死亡原因の1位は、階段からの落下。2位は、吊り戸などの高い場所へ荷物移動する際に使う簡易な踏み台から、バランスを崩しての落下です。
たかが、踏み台からでも打ちどころが悪いと、命を落とします。だから、私みたいに背がバカでかい方が居ない家では、吊り戸はあまり薦めない。納まり的に仕方なく吊り戸が必要な場合でも、『奥様は、この吊り戸を使わないで下さい』と、厳しいことをよく言っています。
その方が大切だから。